バッハとコレギウム

僕は土曜日のコレギウム の演奏(練習)が終わるとすぐに店に駆け込んでビールをガブ飲みしていますが、1730年代のバッハとその仲間たちも毎週金曜日には同じような事をやっていたようです。ただし練習ではなくジャズクラブのライブ・ショーみたいな事をやっていたのです。彼らの名前も”コレギウム”です。というか我々が彼らの名前に因んでいるんですけど。”コレギウム”のメンバーは大部分がライプツィヒ大学の学生でしたが、折々にプロも加わり、また遠くからやってきた名手がゲストで出演したりもしていたのです。こういう所も我々と似ているんですよね。ネットを見ていたら”コレギウム”について詳しい記事をみつけたので適当に翻訳して紹介します。


http://www.baroquemusic.org/biojsbach.html
からThe authors are Michael and Lawrence Sartorius.

『バッハのコレギウム・ムジクムは、ゴットフリート・ツィンマーマンというコーヒーハウス経営者の所有する場所でコンサートを行っていました。冬期はカタリーネン通りに面した彼のコーヒーハウス内で毎週金曜日の午後6時から8時、夏季はグリンマ門の前のコーヒーガーデンで水曜日の午後4時から6時に行われました。ツィンマーマンは経営者だけでなく音楽好きで自らも演奏したようであり、頻繁に最新の楽器を買い入れてはミュージシャンたちに使わせていたそうです。新聞記事によると彼は1720年台後半に「幅広い表現力を持つ大きなクラヴィチェンバロ」を導入し、1733年にはさらに立派な物に置き換えたのだそうです。』

訳者注:写真は現在のカタリーネン通り。前方に旧市庁舎の塔が見えます。1733年のコーヒーハウスでのコンサートの広告記事に”フォルテピアノらしき物”が紹介されているので、これらの「クラヴィチェンバロ」というのも実際にはフォルテピアノのことかもしれません。

『通常コンサートと特別コンサートの2種類の催しものが行われました。後者は特別なお祝い(王侯の誕生日など)のためのもので、大規模な編成の祝祭カンタータが演奏されました。通常コンサートの詳細は分からないですが、多くの器楽曲が演奏されたようです。特に、以前にバッハが書いたヴァイオリン・コンチェルトがチェンバロ・コンチェルトに多数編曲されて演奏されました。また時には「コーヒー・カンタータ」のような新作声楽曲も演奏され、ヘンデル・ヴィヴァルディ・テレマン・ロカテッリ・アルビノーニ等の曲も取り上げていたようです。いわゆるライブ・チャージ(客が演奏家に払うチャージ)は特別コンサートと特別ゲストの出演時だけに掛かり、通常コンサートは基本タダだったようです。』

訳者注:ギャラは、学生などアマチュアにはビールを飲ませて終わりかもしれませんが、バッハが無料でこれをやっていたとは思えません。他の記事によると「ツィンマーマンが店の儲けから賄っていた」とあり、そんな所だったと思われます。

『コンサートは立派なイヴェントであり、決してただの食事のBGMみたいなものではありませんでした。”コレギウム”の演奏は、今日我々が考える普通のコンサートと同じものでした。実際、「コンサート」という言葉自体が”コレギウム”の活動に端を発しているのです。バッハの毎週のスケジュールは、新作の作曲、リハーサル、プログラムの構成、などなどに費やされました。バッハにとってこのライブ活動は単なる気晴らしではなく、彼の後半生において中心をなす芸術的な活動と言えるものでした。そして教会は彼にとってどうでもいいものに成り下がって行きました。”コレギウム”との時代(1729~1741)は彼にとってケーテン時代以来の、とても自己満足のいく、ハッピーで豊かな実りをもたらす時代となったのです。彼はツィンマーマンが亡くなる1741年まで足掛け12年間、”コレギウム”の音楽監督を勤めました。』

どうやらツィンマーマンとの絆はとても強いものだったみたいですね。バッハのギャラの工面を彼がしていたのなら当然のことですが。バッハの音楽活動は、王侯貴族の宮廷での演奏や教会での礼拝儀式のための演奏などがほとんどだったのですが、晩年に差し掛かって来た時期にそういった偉そうなパトロンから離れて、コーヒーハウスに音楽を楽しみにやって来る市民のために演奏する喜びを持った、というのは興味深いことです。こういうところにも啓蒙主義の時代から現代に続く時代の流れが現れているように見えます。

上図は、プライセ川を隔ててトーマス教会を望む、リヒターのコーヒーガーデンという店の1736年当時の風景です。この店では演奏もしていますが、トランプやらビリヤードやらで遊んでいる人が多いです。

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