コラール豆知識

ブログをご覧のそこの奥さん!バッハの教会音楽といえばコラールがつきものですね。そこでコラールについてのちょっとした知識を頭に入れて、バッハのカンタータ・ライフをちょっとだけグレードアップしてエンジョイしましょう!

コラールはどんな風に出来たか

マルティン・ルターがカトリックと袂を分かってから行ったことの1つに、ラテン語だけで行う礼拝を自国語に置き換える、というのがありました。ラテン語だけだった歌も自国語(ドイツ語)にしようとしたのですが、ただ単に言葉を変えるだけでなく、会衆が皆で歌えるような簡単な歌を作ろうと思ったところがルターの真骨頂です。というのは当時(ルネサンス期)の教会音楽は複雑なポリフォニー音楽が隆盛で、とても会衆が歌えるようなもので無くなっていたので、「こういう所が近頃の教会のダメな所だ。」とルターが思ったのも当然でした。ただルター自身はポリフォニー音楽が好きだったので、それはそれで残しつつ、単純な聖歌を新たに作ろうとしたわけです。そこでまずルターが率先してドイツ語聖歌の歌詞を作って、それにメロディーをくっつけてみました。ちなみに、この聖歌は大部分が中世以来ドイツで人気のあったバール形式というスタイルで作られました。これはA-A-Bという、前半を繰り返す2部形式です。

アリ曲に歌詞をくっつける。

まずはよく知ってるアリ曲を利用するのが手っ取り早い方法です。「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」(Nun komm, der Heiden Heiland)は基本的に同じ内容の歌詞をもつラテン語聖歌「Veni redemptor gentium」のメロディーを頂戴しています。

Veni redemptor gentiumveni-redemptor

ルターが歌詞を付けた当初は、原曲と同じくメロディーだけの超シンプルなものでした。

nun1

ルターのこの聖歌は殆どすぐさまに、ルターの協力者であったヴィッテンベルクの楽長ヨハン・ヴァルターによってポリフォニー音楽に展開されています。ルターの時代におけるコラールの使用法の一端を伺うことができます。

Walther-Heiland

それから150年以上過ぎて、バッハによって磨き上げられたものがこれです。

62chorale

新しく作曲する。

新しく作った歌詞にうまく合う曲が見つからなければ、作曲という手段に出ます。これもルターが率先してやりだしました。ただ、音楽の専門家じゃなかったのでメロディーを思いつくのがせいぜいだったみたいです。「神はわがやぐら」(Ein’ feste Burg ist unser Gott)はルター作詞作曲の有名曲です。

Die Reformation erfand auch die Musik in der Kirche neu

この曲も楽長ヨハン・ヴァルターによってすぐに立派なアレンジが施されました。これはさっきの曲より単純にアレンジされていますが、やはりポリフォニックです。コラール旋律はテノールにあり、これはこの時代の典型的なやり方でした。einfeste2

このコラールは宗教改革の意気を示す内容なのだから、アリ曲から相応しいメロディーを探すのはそもそも難しかったでしょう。そこでメロディーも作ったんだろうと思います。バッハも宗教改革記念日用のカンタータ80番でこのコラールを使っています。80chorale

 コラールは歌詞が肝心

コラールはオリジナルのメロディーもありますが、既存の聖歌や世俗的な歌のメロディーの替え歌も多く、有名なメロディーは何度でも使われています。このことはメロディーより歌詞のほうが完全に重要だったことを物語っています。メロディーは歌詞に合うものを適当に取り繕うという感じであり、コラールのタイトルはその曲のテキストのことです。コラールが礼拝のための道具ゆえの事情です。マタイ受難曲でお馴染みの「O Haupt voll Blut und Wunden」は、もともとハンス・レオ・ハスラー作曲の恋愛歌「Mein G’muth ist mir verwirret(わが心は千々に乱れ)」のメロディーをつかっています。meingmut

このメロディーはまずクリストフ・クノールが1613年に出版した「Herzlich tut mich verlangen」のメロディーとして使われました。herzlich

1656年にはパウル・ゲルハルトの「O Haupt voll Blut und Wunden」のメロディーにも使われます。ohauptvoll

パウル・ゲルハルトは「Befiehl du deine Wege」という詩を書き、これにはヨハン・クリューガーの曲がすでに付いているのですが、どういう訳かこの詩にもハスラーの曲がくっつけられてしまってます。befiel

これら3つのコラールは同じメロディーでありながらも、別の曲と認識されています。ややこしい!

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